十一月号の深海集から

菅野 孝夫選

 

湯冷ましに湯気仄かなり今朝の秋     研 二

 

乾杯のビールに酔つてしまひけり     ひ ろ

 

威銃撃ちて男ら発情す          砂 女

 

窓閉めに上がる二階の秋暑かな      あつ子

 

蟬の穴人差指の深さあり         三 郎

 

爽やかやみんなの体操足上げて      よしえ

 

空蟬を拾ひ数へてさみしき手       裕 子

 

車椅子の夫と花火を見てをりぬ      千 代

 

パンに飽きご飯に飽きて夏終る      芳 朗

 

多目的広場ドローンと赤蜻蛉       真砂子

 

秋暑し五叉路の角のラーメン屋      のり子

 

仰向けの蟬を大きく跨ぎけり       弘 

 

今月の推選作品/11月号

蒼茫集・春蟬集同人作品より菅野孝夫選          

 

海暮れて蠅を止めたる気圧計    内田恵里子

 

生簀から掬ひて鮎に串を打つ    大越 秀子

 

蛍川あとの一歩に戻されて     橋本 幸子

 

向日葵の草臥れてゐる日暮かな   松尾美枝子

 

卓袱台の三本脚や夜の秋      萩原 敏子

 

雪渓や穂高連峰仰ぎ見て      川名 澄子

 

歩行器と一心同体小鳥来る     三上 イツ

 

夏の夜の電話ボックス誰かゐる   伊藤 泰子

 

西穂高岳独標鳥渡る        長谷部かず代

 

船が来て上下に鳰の浮巣かな    窪田由美子

 

味噌汁の今朝の喉ごし秋に入る   亀井 歌子

 

出目金を掬ふまではと付き合へり  財間 和代

 

秋めける乗換駅の本屋かな     戸川 雅子

 

新盆や畳の部屋に椅子置いて    塩川 邦子