菅野孝夫

拾ひけり

 

夏風邪を引き摺つてをり蟇

 

夏ばてのラジオ体操途中まで

 

生きてゐる蟹を茹でけり食ふために

 

夏の終り民生委員来て笑ふ

 

五枚刃の剃刀秋となりにけり

 

ひぐらしの頻りのこゑを矢継ぎ早

 

秋の蟬落ちてそれきり雨やまず

 

橡の実が落ちてゐるので仰ぎ見る

 

俯仰天地に愧ぢて秋の蠅

 

二日ゐて見えなくなりぬ秋の蠅

 

岩手より秋刀魚一箱どんと来る

 

瀬に遠く誰か竿振る秋の暮

 

栗落ちて拾ふ人なし拾ひけり

 

栗ご飯食べたくなりぬ栗を剥く

 

栗飯の可も不可もなき塩加減

 

次の日の朝も出されて栗ご飯