菅野孝夫

余花の雨

 

 

 

 

 

 

山深く人の家あり囀れり

 

さきみちて人影もなき桜かな

 

久慈川の芽吹の風に団子焼く

 

耕して雨となりたる春田かな

 

なんとなく小腹の空いて花曇

 

赤出しの賽の目豆腐木々芽吹く

 

春の日の鰺の干物を手で食へり

 

水槽の水替へにけり桜餅

 

鳥帰る漬物樽の箍外れ

 

鮠の子も浅瀬に出でて柳の芽

 

鳥の恋屋根から落ちてしまひけり

 

針刺に糸からまつてゐる暮春

 

春の蚊に窓の開かないトイレかな

 

葱焼いて食ひつつ春を惜しみけり

 

少女らのひかがみに夏来りけり

 

人がゐて何かを燃やす余花の雨

平成29年12月号より

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