丸洗ひ

菅野孝夫

 

 

ステッキに士君子然と夏帽子

 

鉄骨をクレーンの鉤に雲の峰

 

猛暑日の屋根の雀を見てをりぬ

 

前を行く人の背中や炎天下

 

空梅雨や本屋の床に銭こぼし

 

なんといふこともなき日の跣かな

 

小人閑居して不善をなす裸

 

老人の体温を越す暑さかな

 

つひに我が裸を恥づる懶惰かな

 

仰向けに蟬落ちてをりまだ死なず

 

炎天下烏の黒の一張羅

 

真夏日のしかも真昼の喉仏

 

ズボンの裾まくり上げたる水あそび

 

涼しさや我が禿頭の丸洗ひ

 

長生きをしてをり甚平着せられて

 

仕事部屋まで線香花火の煙